sangak’s diary

【貴ノ岩暴力事件】横野レイコ氏「暴力に対する認識が日本人とモンゴル人では感覚が違う」

スポーツ報知 大相撲ジャーナル2018年11月号 九州場所展望号

貴ノ岩が付け人に暴行、謹慎に 顔4、5発殴る(夕刊フジ
http://www.zakzak.co.jp/spo/news/181205/spo1812050012-n1.html?ownedref=not%20set_main_newsTop

 日本相撲協会は5日、幕内貴ノ岩(28)=千賀ノ浦部屋=が4日に巡業先の福岡県内の宿舎で、付け人の弟弟子を殴ってケガを負わせたと発表した。協会は貴ノ岩を巡業から引き揚げさせて謹慎とし、今後、事実関係を調べて理事会で処分を決める。
(以上、記事より抜粋)

貴ノ岩、今回は加害者 相撲協会「残念なお知らせ」公表(朝日DEGITA)
https://www.asahi.com/articles/ASLD56G04LD5UTQP033.html

芝田山広報部長(元横綱大乃国)が報道陣に対応し、「残念なお知らせです」と事案を公表。「協会でどういう思いで(暴力根絶に向けた取り組みを)やっているのか、自覚がないんじゃないか」と険しい表情で話した。
(以上、記事より抜粋)

 

 過日、元日馬富士関が起こした暴力事件の被害者になった貴ノ岩氏が、今度は暴力事件の加害者になったとして、ワイドショーは大々的に取り上げております。
 本日放送のフジテレビ『バイキング』でも同様で、今回の事件と共に過去の事件についても説明がありました。
 その後、タレントで同番組MCの坂上忍氏が「なぜ今回のことが起きたのかと思いますか?」と元大相撲力士の維新力浩司氏に問いかけたところ、維新力氏は「以前から貴ノ岩には暴力をふるっているという話があった」、「一連の日馬富士さんとのこと、母国でのバッシング、貴乃花親方の退職、いろんなストレスがあり、酒が入ったところでついカーっとなってしまったのではないか」とコメント。
 続いて意見を求められた相撲リポーター・横野レイコ氏は「一連の騒動も、当事者なのにどこか他人事というか、当事者意識がなかったように思う。暴力に対する認識も、日本人とモンゴル人では感覚が違うと思います。(元)日馬富士から暴力を受けたにも関わらず、彼(貴ノ岩氏)の中では平手で4,5発は『暴力』ではなかったのはないか」と、貴ノ岩氏の母国であるモンゴル人の気質にあるのではと指摘。これを受けて、国際弁護士・元裁判官の清原博氏も「日本でやっていくなら、暴力はダメだと肝に銘じておくべき」と、やはりモンゴル人の気質に言及しておりました。

 相撲に詳しくない素人の身からしたら、モンゴルの方々が日本の相撲に関わるようになってだいぶ経つわけで、いまさら気質や文化の違いを理由にするのはおかしいような気がするのですが、相撲に詳しい方々そうだというならそうなのかも知れませんね。それ自体、相撲協会の対応が遅れているという証拠になりそうですが。

指導体制に問題あり?

 さらに坂上氏が「貴乃花親方に教育を受けてきた子なわけじゃないですか、それがコレだったら、『じゃあ誰が親方ならいいの?』っていう気になっちゃう」と嘆くと、 お笑い芸人フットボールアワー岩尾望氏は「元貴乃花親方は『指導を徹底している』とさんざん言うてましたけど、ああいう方なので、うまく伝えられてなかったんじゃ?」と貴乃花親方の指導そのものを疑問視。
 また横野氏は、昨日、元日馬富士関と話をしたことを明かし、「本人(元日馬富士関)はこんなことになって、『(貴ノ岩氏には)ちゃんと生きていて欲しかった、何をやっているんだ』とおっしゃってました」と元日馬富士関がやりきれない思いにあることを語りました。
 お笑いタレントの横澤夏子氏も「こんだけ精神的苦痛を受けて辛い思いをしているのに、なんでこんな(協会の努力や自らの功績を)全部覆すようなことをしたのか。逆に先陣きって『暴力はダメだ』という立場に立っていただきたかった。なんでみんなをびっくりさせるようなことをするのか。なんで先が見えないのか。悲しいなと思う」と、貴ノ岩の浅はかな行動を非難。
 番組出演者のほとんどが、貴ノ岩個人の性格や生い立ちに原因があると思っているようです。

 また貴ノ岩氏の今後の処分については「解雇を含めた厳罰は検討されることはさけられない」ことが明かされ、スタジオでも「二場所出場停止以上。それに加えて、貴公俊の事件を受けても何も分かっていなかったとして番付降下も加わるのでは」(横野氏)、「二場所出場停止すれば幕下に落ちる。そうすると無給になってゼロからのスタート。それに減俸が加わるのが妥当では」(維新力氏)という意見でした。
 タレントの薬丸裕英氏は「日馬富士関は引退した。あのとき起きたことやこれまでのことが全部明らかになってしまうのであれば、僕はもっときつい処分なのでは? だってこれだけのことがあっても暴力ですから。一番分かっていなければならない人間が暴力をしたんですから」と、より重い処罰が下されるべきという感覚のようです。
 また現在、警察に被害届が出ていない件に関して触れられると、清原氏貴公俊の事件も被害届はでていなかったが、ファンの方々が告発状を提出し、警察がそれを受理することで傷害事件として立件された。結果的には示談されていたということで不起訴になったが、今回も被害届けが出ていないからといって待っていていいのか。今回、相撲協会内部のガバナンスやコンプライアンスが効いてないことが明らかになっているので、相撲協会が自ら告発状を出すべきだ」と主張し、厳格な対応を求めていました。

協会に蔓延する「負の連鎖」

 番組では平成30年2月から10月にかけて行われた「暴力問題再発防止検討委員会」の最終報告書が紹介され、「暴力を受けた数」は昭和53年を起点として減少傾向にあり、平成19年の力士暴行死事件から右肩下がりにあることが公表されました。
 またその実態として「同部屋における弟弟子が兄弟子から暴力を受けたと回答した例がほとんど。付き人が関取から暴力を受けたと回答することも少なくなかった」ことが紹介されると、坂上氏は、この付き人精度を批判。
 すでに芸能界でも付き人制度が減りつつあることを語り、自身の経験談として「20年ほど前まではつけていた。でもある現場で大物俳優の方から『付き人をつけていると自分が偉くなったように勘違いするからやめた』という話を聞いて、それ以来、ばっさりやめた」ことを明かした。

 これに対して横野氏は「私は、それ(付き人制度)も相撲の良さだと思っている。悪用するケースがあるから説得力がないと思いますけど、先輩の背中を流すことで会話も生まれる」と反論しますが、坂上氏は「社会人として教育するシステムが確立されているなら問題ないと思う。でもあんな閉鎖された世界で、強烈な上下関係がいまだにある世界なんて(他に)ある?」と批判。
 薬丸氏も「上からちゃんと教えを受けていれば、そういうこと(横野氏の主張する付き人制度の利点)を継承していくこともあると思う。でも番付至上主義で、上の人がどうしても偉くなって、付き人がつくと、どうしても自分が大きくなったと勘違いする、という弊害のほうが大きいと思う」と、付き人制度によるメリットよりデメリットのほうが大きいのではと指摘しました。
 清原氏も「暴力決別宣言はいいんですよ。でも暴力が生み出す土壌を考えなければならない。土壌が残っている限り暴力はなくならない。仮にその土壌が、部屋制度、共同生活、付き人制度にあるのだとしたら、相撲協会がメスを入れて変えていかなければならないと思います」とコメント。正しい変革を行うのあれで、しきたりすらも変えていく覚悟が必要のようです。

 同じく最終報告書では「入門して数年間の頃に相撲指導や相撲指導以外の生活指導教育の目的で暴力を受けた者は、自己の年次が向上し、弟弟子を教育する兄弟子の立場になった段階に至ると、今度は弟弟子に対して相撲指導や相撲指導以外の生活指導教育の目的で暴力を振るう側に回るという、暴力に関するいわば『負の連鎖』というべきものが存在して見て取れるように思う」と語られています。
 坂上氏は我が意を得たりとばかり「要はシステムの問題だと言ってるわけですよね」と切って捨てますが、一方で「よく分析されていますが、なのに……ということですよね」と批判は止まりません。
 薬丸氏も「そうだよね。分析できているのになぜそれがすぐ活かせないんだろう。相撲協会は、たぶん『これからやろうとしていた』とおっしゃるんでしょうけど、『これから』じゃダメなんですよ。すべて(の対応策を)整えたうえで発表するくらいのほうが、僕は良かったと思う」と、いまだに後手後手に回っている相撲協会の対応に苦言を呈しました。
 「相撲協会には暴力を生み出す土壌があり、貴ノ岩氏の事件もその土壌が生み出したもの」というのが、番組側の意見の総括のようです。

暴力事件の被害者を襲うPTSDとは?

 一方で、本件に関して、作家の大石英司は次のようなコメントを出されています。

「彼にそういう暴力行為の常習性がこれまで無かったのであれば、
 これは典型的なPTSDの一つと理解すべきです。
 必要なのは罰ではなくカウンセリングです」
大石英司の代替空港 http://eiji.txt-nifty.com/diary/より)

 暴力事件の被害者が心的外傷後ストレス障害PTSD)を負い、精神的な均衡を保てなくなることがあるそうです。それが他者への暴力につながるかどうかは分かりませんが、家庭内のDVが、親から子、子から孫へと連鎖していくという話は聞いたことがあります。
 維新力氏によると、貴ノ岩氏には以前から暴力を振るっていたそうですから、あるいはこの大石氏のコメントのほうが的外れということもありえます。
 しかし「バイキング」では、つい昨日、窃盗症(クレプトマニア)に苦しむマラソン元日本代表の原裕美子氏について取り上げたばかり。その番組の中で本人の意思ではどうしようもない精神疾患の恐ろしさについて学んだはずなのに、こういう暴力事件についてPTSDの可能性を疑わないのはいかがなものかと思います。
 上述の被害届の話題が出た際、薬丸氏は「付き人の人の心のケアも大事。相撲がとれなくなっちゃうかも」とおっしゃっていましたが、貴ノ岩氏の現在のメンタル事情について触れていなかったのは不思議ですね。もしかして「体の傷が治る頃には心の傷も消えている」と思っていらっしゃるのでしょうか?
 もし仮に、今回の暴力事件がPTSDによるものだとしたら、これは貴ノ岩氏本人の問題ではなく、貴ノ岩氏に傷を負わせた元日馬富士関および事件後にメンタルケアを怠った相撲協会の責任だと思います。
 横野氏によれば、元日馬富士関は「(貴ノ岩氏には)ちゃんと生きていて欲しかった、何をやっているんだ」とおっしゃっていたそうですが、これって、元日馬富士関としては自分の暴力が残した爪痕だとは全く思っていないってことですよね? もちろんこのコメントを自信満々に持ち出してきた横野氏も同様だと思いますが、PTSDに対しての認識があれば、まだ原因がはっきり分かったわけでもない段階で、こんな軽はずみな言動はできないと思います。
 坂上氏は、相撲協会で多発する暴力事件を「古い体質のせい」とおっしゃっていましたが、そういう「習慣」や「体質」のせいにしてしまい、暴力被害者のPTSDの可能性から目をそむける感性もまた「古い」ものなのではないでしょうか?